《労働ルールの豆知識》
見落としがちなテーマ、知っておきたいテーマなど取り上げてご紹介します。
【労働保険の年度更新】
今回は、労働法というより手続のお話です。
年に1度の、「労働保険の年度更新」のシーズンが近づいてきました。
5月中には、労働局から皆さまの事業所にA4サイズの封筒が届きます。
濃い緑色の封筒ですかね。
その中には、労働保険の申告書類が入っています。
《労働保険とは》
労働保険とは、「労働者災害補償保険(労災保険)」と「雇用保険」の総称です。
企業経営されている皆さまはよくご存知のことと思いますが、
まず、「労災保険」は、従業員を1人でも雇用したら適用となります。
その従業員が、正社員でも短時間のアルバイトでも、たとえ週1日勤務であったとしても適用されます。
つまり、1人でも従業員を雇用したら届出と保険料の申告納付が必要となるわけです。
一方、「雇用保険」については、週20時間以上かつ31日以上の継続雇用見込みの従業員を雇用した場合に適用となります。
ちなみに、ここでいう「従業員」とは労働者性のある従業員のことでして、例えば、同居する親族だけを従業員として雇っていても労働者には該当しませんので気を付けて下さい。
事業を起こし労働者を雇ったら、その事業所に対する労働保険が法的に自然成立します。
届出の有無は関係ありません。
届け出ることで労働保険が適用される、というわけではないのです。
条件を満たしていることにより労働保険が自然に適用されることとなった事業所は、その日から10日以内に、
・労働保険保険関係成立届
・雇用保険適用事業所設置届
を出さなければなりません。
また、50日以内に、労働保険料の申告納付をしなければなりません。
(実際には、10日以内の保険関係成立届と同時に労働保険料申告書を提出していますね)
以上が、事業を起こした時の手続についてです。
さて本題。
《労働保険の年度更新》
年度更新とは、年1回の労働保険料の申告納付の手続のことです。
具体的には、
昨年度(前年4月から今年3月までの1年間)の、労働保険料の確定申告と保険料の精算、
今年度(今年4月から来年3月までの1年間)の、労働保険料の概算申告と保険料の納付、
を行ないます。
まずは精算。
昨年度、すなわち昨年4月から今年3月までの、従業員に支払った賃金の総額を元に労働保険料を算出します。
昨年の手続で、仮定の賃金総額に基いた保険料を既に納付していますので、実際の賃金総額による算出額との差額を精算します。
不足していたら不足分を納付し、多すぎていたら還付を受ける、というわけです。
次に、これからの一年度間の概算保険料の申告ですが、こちらは簡単です。
昨年度の確定した賃金総額を、そのまま今年度の賃金総額として労働保険料額を算出します。
そしてその額を納付すれば良いのです。
ちなみに、昨年多く払い過ぎた労働保険料がある場合に還付を受けると書きましたが、還付を受けずに今年納める保険料額の一部に充当することができます。
労災保険料率は、業種によって細かく分類されていまして、1000分の2.5~1000分の88で設定されています。
当然のことながら、労働者への危険の度合いが高い業種ほど料率が高くなる、という考え方となります。
雇用保険料率は、基本的には一般の料率が適用され、特掲事業や建設の事業に該当する事業の場合は、高い料率が適用されます。
労災保険も雇用保険も、昨年度と今年度の保険料率が異なる場合がありますので、要注意です。
以上、簡単に書きましたが、労働保険は従業員を保護するためであると同時に、労災事故などで不意の支出が必要となる事業主にとっても事業の継続に寄与する、大切な制度であります。
期限内に正確に申告納付する必要がありますので、きちんと対応しましょう。
労働局からの封筒が届きましたら、社会保険労務士に連絡してください。
担当している社会保険労務士がいない事業主さまは、ばば社労士事務所までご連絡くだされば、対応させていただきます。
ちなみに、私は6月1日~7月10日の申告期間に、東京労働局委嘱の臨時労働保険指導員を務める予定でもいます。
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