《労働ルールの豆知識》

見落としがちなテーマ、知っておきたいテーマなど取り上げてご紹介します。


【時間外労働って原則違法なんです】

え?どこの会社もフツーに時間外労働させていますよ?

 

前回、時間外労働と残業の違いについてお話しました。

また、これまでに何度か「36協定」という労使協定について触れました。

今日は、この36協定を中心にお話したいと思います。

 

労働基準法に定められた労働時間の上限は、

1日あたり8時間

1週あたり40時間

となっています。

そして、この時間数を超えて従業員を働かせることは原則として違法となります。

「原則として」としましたのには、もちろん、例外があるからということです。

 

《例外1、非常災害等の場合》

まず最初の例外は非常災害等です。災害その他の緊急の事由によって通常の労働時間では仕事が終わらない場合、ということですね。

これは、条件がありまして、「労働基準監督署長が認める場合」となっています。

ですから、事前に労基署長の許可を得なければなりません。

まあ、事態急迫のときは事後の届出でOK、と定められています。

 

災害が起きた!

倉庫にある商品を守るため、別の場所へ移動させなければならない!

社長も営業マンも事務員も全社員総出でせっせと運び出している。

まだまだたくさん商品が残っている。

「あのー、スミマセン。今日の勤務時間が8時間になりましたので帰ります。サヨナラ。」

そんなワケにいかないですもんね。

そういう場合は、時間外労働させてもOK、ということになるわけです。

 

《例外2、36協定による場合》

今日のメインテーマです。

最初にお話しましたが、あくまでも、1日8時間・1週40時間を超えて労働させることは原則として違法です。

そして、この労働時間の違反に対しては、罰則があります。

ですが、労働基準法36条の規定によって、「36協定」の手続を行なうことで本来刑罰が課せられる時間外労働を適法なものとすることができるようになる、というわけなのです。

ですので、この規定は「免罰規定」とよばれています。

逆にいえば、この免罰の効果を有効なものとし、従業員に時間外労働をさせても違法とならないようにするためには、36協定の手続を適切に行なう必要がある、ということなのであります。

 

《36協定の手続》

では、その手続についてです。

まずは、従業員代表を選出します。

従業員の過半数で組織する労働組合がある場合は必要ありませんが、そうでない場合は、まず、従業員の過半数を代表する者を選出します。

この従業員代表となることができる者の要件や選出方法などについて、もろもろの規定や判例がありますので注意が必要ですが、ここでは割愛します。

そして、選出された従業員代表との間で書面による労使協定を締結します。

さらに、この協定書を添付して所定の届書を労働基準監督署へ届け出ます。

この届出まで完了させることで「免罰」されるということになります。

 

《まだ不十分です》

ところが、36協定はあくまでも「免罰」されるというだけでありまして、まだ手続的には不十分です。

ん?どういうことかな?

それは、従業員に時間外労働させるためには、さらに私法上の要件を満たす必要がある、ということです。

すなわち、就業規則や労働契約で「業務上の必要によって時間外労働を命じることがある」旨を規定しておく必要があるのです。

ここまでやってはじめて、従業員に対して時間外労働をさせる業務上の命令を出せることになりますし、従業員は正当な理由なくこれを拒絶することができなくなる、ということなのです。

 

今回このテーマを取り上げましたのは、4月に入りますと、どうやら労基署の体制が強化される!?との話を聞いたからでありまして、どのような対応となるのかちょっと気になるところであります。

年間の労基署による定期監督件数は15万件前後ですが、これが増えるのか、はたまた、長時間労働が疑われる事業所への監督が増えるのか・・・・。

 

労基法上の36協定と私法上の要件とをきちんと備えて、変なところで足元をすくわれないように気を付けましょう。


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